2018年9月21日金曜日

追悼:山本"KID"徳郁

周知のように、山本"KID"徳郁が9月18日、永眠した。享年41歳。総合格闘技の生涯戦績は18勝6敗2無効試合だった。
所英男のツイッターが次のようにつぶやいていた。「KIDさん。KIDさんがいたから、たくさんの総合格闘技の軽量級選手が世の中に出て、格闘技で食べていくことができました。みんなの恩人です。心から感謝しています。ずっと追いかけ続けていました。本当に憧れでした。心よりご冥福をお祈りします。ゆっくり休んでください。」
その通りで、メジャーシーンに軽量級の総合格闘家というイメージと活躍の場所を作ったのは、KIDの功績に違いない。2000年代初頭あたりには、PRIDE武士道には五味隆典川尻達也長南亮桜井マッハ速人ら、HERO'SにはKID・所英男須藤元気らと、現在は40歳前後になる世代がそれぞれのキャラクターを生かし、テレビ上で中軽量級を盛り上げていた。その中でも小さいにもかかわらず、最もワイルドで華やかな格闘家のアイコンと言ってもよかったKIDだが、KRAZY BEEのボスとして格闘界全般の底上げにも関わりながら次世代の有力ファイターを育成してきたことも大きな功績だった。
アメリカでは現在軽量級も日の目を浴びているが、いまだにその人気はヘビー級に及ばないとされる。しかし、WECで軽量級への注目を作り出した貢献者であるユライア・フェイバーのあだ名が「カリフォルニア・キッド」だったのは、先行者のKIDが格闘界にいたからだったろう。その意味でも世界的に影響力のあった存在だった。
MMAfighting.comはKIDのみならず一族の経歴まで含めた詳細なニュースを報じたが、生まれた時からエリートアスリートの道を進みながら総合格闘技に転向した点、(格闘技の動きのためにバレエまで習ったという)鍛え上げられたエレガントさと天性のワイルドさを兼ね備えた選手として、日本の総合界でも高度なアスリートのセンスと破天荒な「格闘家」という両面をまさしく体現していた存在だった。
「こう生きてみたい」というような人々の夢の一つを体現していたような人物。個人的には、駅から落ちた男性を救ったというニュース(それもあくまで自然体で)が忘れられない。もっと活躍してゆくはずだと思っていたが、あまりにも早い旅出だった。合掌。