2018年4月23日月曜日

UFCファイトナイト128:バルボーザvs.リー

ケビン・リーvs.エジソン・バルボーザ(UFCファイトナイト128
ニュージャージー州アトランティック・シティで開催されたファイトナイトシリーズ。
第一試合で中村K太郎トニー・マーティンと対戦したが、打撃はリーチを用いて制され、各ラウンド最後にはテイクダウンに行くも返され、敗北。
もの凄いダメージを受けたわけではないが、全体的に封じ込まれた形だ。グラウンドでの攻防でも勝てなかった所が痛い。前戦は勝利したのだが、なかなか連勝と行かないところが難しい。
印象的な試合としては、シアー・バハドゥルサダが相手みぞおちへの前蹴りでルアン・チャガスを2RKO。どれほど体を鍛えても鍛えられないのが、みぞおちである。急所に突き刺さった蹴りで相手はしばらく立ち上がれず。ノックアウト・オブ・ザ・ナイト(KOTN)の一人に選ばれた。
あと一人のKOTNはチアゴ・サントスを右で沈めたデヴィッド・ブランチだったが、サントスがずっと手を下げた構えだったのに対し、ケージ際に詰めたところで顎に一撃を入れ、それで試合は終了した。
これはこれで凄いのだが、ジム・ミラーに勝利したダン・フッカーの、打点が高くパンチ並の頻度で出る膝もまた印象的であった。ロス・ピアソン戦も膝で相手を大の字にしていたが、手足が長い上に力のありそうな膝蹴りは脅威である。身長差が活かせる際には特に、試合を決める一発となっている。
メインの一試合前がフランキー・エドガーカブ・スワンソンというベテラン勢の豪華カードだったが、互いに直近の試合で負けた印象が強く、いわば両者ともに新規巻き返しを狙った試合だった。なおエドガーは試合直前に父親を亡くしたとのことだ。
しかしこの試合がメインではなく、ケビン・リーエジソン・バルボーザをメインに据えたところには、UFCが今後若手のスターを育ててゆかなければならないと考えている意識が見える。アメリカ国内の試合なので、メインの知名度はベテランに及ばずとも集客が見込めるということなのか。
両者は2014年10月にUFCファイトナイト57で対戦しているので二戦目。一戦目は、エドガーが5Rネッククランクで勝利している。
今回の結果は3ラウンド判定、3-0でまたもエドガーの勝利となった。
エドガーは常に角度を変えながら細かい打撃を刻んでゆき、スワンソンの遠心力を活かすフック中心の打撃の隙を突きながら、有効打をより多く入れていた。
またエドガーは、自分が追いかける際には常に頭を揺らして相手にとり攻めにくい角度を取るが、スワンソンがステップを使って攻め口を探そうとすると、それを潰すように動いて未然に相手の自由を奪う。エドガーの絶え間ない細かな動きと、それを全ラウンドにわたって実行できるタフさはやはり他の追随を許さないものだ。
スワンソンは今回はUFCとの再契約直後だったが、若干スローに見えたか。
リー対バルボーザはリーの1ポンド体重超過により、出場給の20%を相手に払っての試合になった。しかしリーは以前のトニー・ファーガソン戦(UFC216)でも体重超過し、勝利してもタイトル資格なしという条件で試合をしていた。
常習犯化しているというか、階級的にかなり無理があるのではないか(上の動画はUFC216時のもの)。
試合は1R冒頭からリーが打撃を積極的に出てプレッシャーをかけるが、1分ほどでバルボーザをケージ際に詰めてテイクダウン。カビブ・ヌルマゴメドフ戦を彷彿とさせられるグラウンドコントロールでリーが上を取り、しっかり押さえた後はバルボーザにパウンドを注ぎ続ける(ただしヌルマゴメドフに比べ、リーは最終的にフルマウントを取ることが多い。ヌルマゴはマウントにこだわらないという違いがある)。
バルボーザもガードポジションに戻して足を使うが、リーはマウントへ戻して強烈なパウンド、バックから再びハーフマウントを奪い、拳と肘で強力なパウンドを打ち込む。
2Rも同様。1分過ぎたあたりでタックルから、ダブルレッグというより尻の下あたりを抱えてのテイクダウンをした後は、ひたすら上のポジションをキープし、パウンドを入れ続ける。
リーのパウンドは一発一発が大きくて重いがスピードがあり、当たった際に「ドシッ」もしくは「グチャッ」という音が響いていた。非常に大きなダメージがあり、このパウンドのパワーとテクニックは驚異である。
これまで打撃でも先手を奪われていい所のなかったバルボーザだが、3Rになるとようやく蹴りが出始める。
1分経過頃に出た後ろ回しのハイがリーの側頭部に命中し、リーはまるで足の骨が全部無くなったようによろめく。バルボーザは抑えようとするが、リーが立ち上がってタックルに入り、またもテイクダウンされてしまう。回復を待っているリーから残り2分で離れ、残りはスタンドのまま打撃を交換しつつラウンド終了。
4Rは30秒でリーがテイクダウンした後は、再びポジションを取り続けながらのパウンドで終始する。
5Rは当初打撃戦になり、バルボーザのいいボディやミドルも入るが、すでに疲れ切っており、テイクダウンを切った後で右目の上からの大量出血を見たレフェリーが医者を呼び、そのままドクターストップ。リーのTKO勝利となった。
バルボーザは打撃で押せればいいのだが、最初からイニシアチブを取られたのが痛い。それにグラウンドで時折、相手に背中を見せるように転がってしまう悪い癖があるように思える。トニー・ファーガソンであれば10thプラネット仕込みの柔術があり、リーに寝かされた後でも三角締めで仕留めることができたが、ヌルマゴメドフ戦に引き続いて同じような形で負けてしまったのは辛いところである。
しかしリーも体重超過さえなければ素直に勝利を寿げるのだが、こういう形だとやはり釈然とはしない。しゃべりが出来、かつストリートの匂いがするファイターということでUFCも推しているようだし、グラインド&パウンドの強さが並外れているのは明らかなのだが。
ヌルマゴメドフ戦をアピールしているが、まずはウェイト問題を払拭しなければならないだろう。