2018年2月5日月曜日

UFCファイトナイト125:マチダvs.アンダース

リョート・マチダvs.エリック・アンダース(UFCファイトナイト125・ベレン
今年はブラジルへの日本人移民110年記念年ということだが、今回のUFCファイトナイトが開催された土地・ベレンは、コンデ・コマ=前田光世が柔術を教えた地であり、そこで弟子となったカーロス・グレイシーが一族へ柔術を受け継ぎ、やがてUFCへとつながってゆく流れのきっかけにもなった場所である(参考:MMA PLANETブラジル移民の100年)。
しかし大会直前にコンデ・コマの墓石が盗まれたらしく、ニュース記事によると「米国から3人の柔術家メンバーがコンデ・コマ記録作成のために墓地を訪れていた」が、盗難を知りがっかりしていたということで、逆に今でも格闘技にとって重要な地であることがうかがわれる。
そこで育った町田空手出身、かつてのイノキボンバイエの大会時代も経て笑UFCのチャンピオンも経験したリョート・マチダをメインに、元アメフト選手でこれまで無敗のエリック・アンダースとの試合となった。この意味でMMAのヒストリー的には興味深いというか、割りにマニアックな見方もできる大会だったが、単なる普通の大会として見ても中々盛り上がっていたような気がする。
個人的には、今回プレリムで出たティム・ミーンズの体格を活かしたテクニカルなMMAは好みで注目して見ているのだが、最近あまり勝てず、今回もセルジオ・モラエスに判定で敗北した。相手が力押しして来るとスウィングする試合になるのだが、アレックス・オリヴェイラに負けて以降は持ち味を消されてしまう試合も多い。一皮むける必要があるのだろう。
チアゴ・サントスアンソニー・スミスは、ヘクター・ロンバートに勝利したスミスが波に乗るかと思ったが、サントスが全面的に打撃で押し、最後は斜めの位置から三日月蹴り気味にレバーに入るキックでスミスの気持ちをへし折った。
しかしそれより戦慄だったのは、プリシラ・カショエイラに対してヴァレンチーナ・シェフチェンコが圧倒的支配力を見せた試合である。サラ・カフマンホーリー・ホルムジュリアナ・ペーニャ、そしてアマンダ・ヌネスといった強豪と戦ってきたシェフチェンコに、UFC1戦目のカショエイラをなぜ当てたのかはよく知らないが、実力差がありすぎるマッチメークはKOを期待する気持ちよりも、「早く止めろ」という気になってきてしまう。
私個人としては、試合というのは(少なくとも事前に)実力差が拮抗しているはずな選手同士のしのぎ合いこそ見どころだと期待してしまうので、こういう圧勝してしまうような試合には、あまり意義を感じられない。ダナ・ホワイトはレフェリーのマリオ・ヤマサキを非難しているようだが、それを言うならマッチメークの問題点も考えるべきだろう。
(※追記 シェフチェンコはウェルターからフライへと階級を落としており、その最初の試合だったようだ。)
メインのリョート対アンダースは、5Rにわたる試合となった。全部叙述していると長くなるので、ここではおおまかな感じで。
基本はスタンドで進んだ試合であるが、リョートの設定する距離に対して、アンダースがカウンター待ちで臨んだ展開だったと思う。1Rからリョートは常に足の届く距離を保ちながら左右に回り、蹴り主体で打撃を入れるが、アンダースはリョートの空手の捉えにくさに対し、打撃が生む隙を突いてパンチを入れてゆく攻撃が目立った。アンダースがケージ際に押し込む展開もあったが、リョートのディフェンスはしっかりしていたので、それ以上の攻めにもならない。
後半ラウンドになると両者のスタミナ切れも予想されたが、そうもならずに最後まで進んだ印象である。互いに隙を読み合う展開として、退屈な試合ではなかったが、決定打には欠ける5Rとなった。
判定は2-1のスプリットでリョートに軍配が上がったが、どちらが勝ってもおかしくない試合であった。リョートはルーク・ロックホールドヨエル・ロメロデレク・ブランソンに三連敗していたので、首がつながったというところか。
この感じだと、UFCの待遇的に見て、今後は新星選手への壁的な存在になってゆく可能性が高い。だが本人は、次戦の相手としてマイケル・ビスピンをアピールしていたので、レジェンドマッチに興味がそろそろ移っているのかも知れない。しかし、リョートにはそれをアピールする資格はあるだろう。