2018年1月15日月曜日

UFCファイトナイト124:スティーブンスvs.ドゥホ

ジェレミー・スティーブンスvs.チェ・ドゥホ(UFCファイトナイト124・セントルイス
ビクトー・ベウフォートユライア・ホールが消滅、年明け初のUFC大会は当初の予定より一試合少なく開催。
マイケル・ジョンソンペイジ・ヴァンザンという、ネームがあるが階級を変えた選手たちがそれぞれダレン・エルキンスジェシカ=ローズ・クラークというベテラン勢に返り討ちにされる展開があったが(上の動画、エルキンスのRNCは見事だった)、ビッグネームのビクトー対ユライアが消えたことでやはり注目は「コリアン・スーパーボーイ」チェ・ドゥホの試合に集まっていた。大会用の無料試合動画にはドゥホの知名度が一挙に上がったカブ・スワンソン戦を流し、主催者側も推しまくっていた感がある。
韓国選手の中でドゥホは、「コリアン・ゾンビ」ジョン・チャンソンと共に「コリアン〜」と呼ばれているわけで、まあこういうあだ名が付くということはホームではないということだが、既にキャラクターが付いていて人気・知名度ともに高い。
ドゥホは試合前のインタビューでジョン・チャンソンやキム・ドンヒョンに対してリスペクトを述べているが、韓国の選手がUFCに出場し続けていることにはやはり強い意識があることをうかがわせた。また、徴兵前にチャンピオンまで登りつめたい旨にも触れていて、解説者たちはその事情にも触れていた。概してドゥホ中心に回っていた大会だ。
なお今回は同じチームMADからカン・ギュンホも出場、グイド・カネッティにスラムされながらも、三角絞めをラウンド終了直前で極め切っている。いったんカネッティは金網に押し付けてうまく逃れようとしたが、足を解かず食らいつき続けたギュンホに軍配が上がった。
チェ・ドゥホは並外れたスピードで繰り出されるジャブとストレートが一番の特徴だが、(一時期UFCの放送でも話していた)コメンテーターのロビン・ブラックが韓国で見てきたところによれば、MMAの練習としてフェンシングの練習を取り入れているらしく、そう言われるとあの打撃のタイミングや的確さは頷けるものがある気がする。
試合は、1Rの間はドゥホがローレッグキックを繰り出しつつ、蹴りで距離を支配していた。ドゥホは近づいては離れ、ローとローレッグキックを当てる。スティーブンスが間合いを詰めてもうまく下がり、ドゥホの蹴りが当たるがスティーブンスのパンチは届かない距離を保ち続けることができた。両者様子見のラウンド。
しかし2Rに入ってスティーブンスは距離を詰め、乱打戦に持ち込んだ。ドゥホがアッパーを外したのをきっかけに距離が詰まり、両者パンチの距離となる。ローレッグキックにスティーブンスが右を合わせると、ドゥホは被弾しながらじりじりと後退。ケージ際を下がりながら打撃を交わしたところで右を喰らい、ダウン。そのままオーバーハンドの右→左肘のパウンド連打でレフェリーストップとなった。
スティーブンスは当然ながら、ドゥホ対スワンソン戦も研究してきていただろう。スワンソンの場合、ドゥホに対してボディワークを使いまくって見えない角度からフックを当てたりなど、撹乱する戦術をとっていた。ドゥホが持つ一番の強みは比類ないスピードと的確さで出す「突き」のようなストレートだが、逆に見ると、その打撃の距離を活かせない時には威力がかなり削がれてしまっている。
スワンソンは左右に的を絞らせないことでドゥホの直線的な動きを殺していたが、スティーブンスの場合、パンチの威力と乱打でドゥホの距離を潰し、押し切った形だ。インタビューでは、次はブライアン・オルテガでも誰でもいいとアピールした。一方のドゥホはスワンソン戦に続き、被弾のダメージ蓄積が心配だ。トップ戦線のタフさに巻き込まれてやられてしまっているので、長所を活かしつつ喰らわないでいられるような、スタイルの見直しも必要かもしれない。