[MMA]
エディ・アルバレスvs.ジャスティン・ゲイジー(UFC218)
マックス・ホロウェイvs.ジョゼ・アルド(同上)
UFC218ではプレリムで
ヤンシー・メデイロス対
アレックス・オリヴェイラ、
ポール・フェルダー対
チャールズ・オリヴェイラ、メインでは更に
ティーシャ・トーレス対
ミシェル・ウォーターソン、
ヘンリー・セフード対
セルジオ・ペティス、そして
フランシス・エンガヌー対
アリスター・オーフリームと、この内のどれか一試合でも他の大会だったらメインが張れる試合が目白押しになっていた。
その中でもやはり気になったのは
エディ・アルバレス対
ジャスティン・ゲイジーという、改めて言うまでもなくベラトール・PRIDEとWSOFで鳴らした両者同士の対決である。「アンダーグラウンド・キング」アルバレスと「ハイライト」ゲイジーは、先の
TUF26のコーチ勢として対決が予定されていた。マクレガーには辛い負け方をしたアルバレスだが、ストリートから叩き上げの猛打とレスリング力を誇る。一方のゲイジーは追い込まれてからも必ず逆転するストーリーを見せてきた、スーパータフなハードヒッターだ。
しかし試合では、アルバレスの極めて巧みなボクシング力が発揮され、パワーとテクニックを兼ね備えた戦いを見せる試合となった。1Rからアルバレスは左右と上下にボディワークを使いつつ、ゲイジーの打撃が当たらない絶妙な距離と角度から、パンチを打ち込んでゆく。連打の中にボディ打ちを組み込んでゆくが、その打撃のバラエティとパワーからは、ボクシングスキルの高さが窺われる。左右ボディからアッパーなどの連携で、前に出るゲイジーの勢いを殺し、スタミナを奪う打撃を見せてゆく。
2Rになると、ストレートやスイング気味のアッパーなどが的確にゲイジーの顎にヒットし、さらに膝蹴りも出るようになる。ゲイジーは接近しつつアルバレスを捉えようとするが、クリンチから強力なボディを喰らう。ゲイジーの鋭いローもしくは膝下を狙う蹴りはアルバレスに確実にダメージを与えていたが、アルバレスのパンチの打撃の回転力と的確さがそれを凌いでいた。
3Rはゲイジーの蹴りにアルバレスが倒れグラウンドを誘うシーンもあったが、首相撲からの膝、そしてダーティボクシングも交えたアルバレスの連打が止まらない。ゲイジーが出すアッパーも強力であり、またインローでアルバレスがよろめく場面もあったが、それを凌いだアルバレスが、最後は再び首相撲からの膝で完璧にゲイジーの顎を捉えた。ハーブ・ディーンが試合を止めKO、追い込まれたゲイジーの復活劇とはならなかった。
相手を潰すローは言わずと知れた
ジョゼ・アルドの代名詞だが、アルドをはじめて見た時にはその構えにまず驚かされたことを思い出す。
ユライア・フェイバー戦のインパクトも凄かったが、当時のUFCは
マット・ヒューズの時代から
GSP黄金時代への移行期であり、レスリングへの熟達がMMAの絶対的条件として語られはじめていた頃だった(今でも必須だが)。タックルに対処するため腰を低く落とす選手がほとんどの中、アルドのアップライト気味の構えは本当に新鮮だった。アルドがあの全身バネのような身体から殺人的な打撃を出していたことは、MMAに適応させたムエタイの技術の幅を広げたのではないか、と勝手に空想する。
マックス・ホロウェイの試合では
ロビン・ブラックも昔言っていたように、戦っている内に相手が必ずどんどん動きを封じられてゆき、ホロウェイのペースへと持ち込まれてゆく。試合の中で相手の動きを学習し適応させてゆく、ファイトIQの高い選手なのだろう。また
リカルド・ラマス戦の最後の打ち合いについてダン・ハーディが指摘することには、
UFC212でのホロウェイ対アルド(第1戦)中にパンチをもらった後、ホロウェイは両手を挙げアルドを威嚇していたが、あれはアルドの打撃がホロウェイを倒すのに十分な力がないことを見切ったためだったという。最後のハードな打ち合いも自分のプレッシャーが十分であることを計算しての殴り合いであった。自分はマクレガーのようなプロモーションはしないと宣言するあたりも含め、非常にクールなファイターである。
今回もまた、ホロウェイの学習能力が発揮された試合だった。1R序盤、アルドは相手の出方を見ていて自分から仕掛けては行かない。ホロウェイも最初手数は少なかったが、徐々に、両手を広めに開いた構えからジャブを突いてゆく。アルドは左右のパンチは出すが、どういう理由でか蹴りは出さない。ホロウェイは挑発ジェスチャーなども交えつつ、余裕ある感じでラウンドが終わった。
2Rもしばらく1Rと同じようなパンチ中心の展開だったが、中盤ようやくアルドの蹴りが出る。ホロウェイはアルドをケージ際に詰めて後ろ回し蹴り、打撃の交換の中で飛び膝なども出すが、基本はジャブを突き続ける。
3R、プレッシャーをかけ続けたホロウェイがアルドを金網に追い詰めると、互いにコンビネーションの応酬。だがホロウェイは打ち終わりに相手のパンチをもらわずそのまま次の攻撃に繋げる、攻防一体の姿勢となったパンチを繰り出してゆく。鋭い左とリーチの長い右を喰らい、アルドの顔が血に染まってゆく。アルドは金網から離れるもホロウェイ逃さず連打、アルドがたまらず倒れこみ、それをニーオンから後ろサイドで抑えたホロウェイが側頭部にパウンド連打。アルド仰向けになるが、更なるパウンドの連打にやはりハーブ・ディーンのレフェリーストップ。ホロウェイが連勝をものにした。
ホロウェイの打撃は、ボディワークと一体化してあらゆる距離から繰り出されており、そのトータルなスキルの高さが証明された試合であった。アルドの強さに衝撃を受けたことのある身としては複雑だが、パンチ交換の最後が必ずホロウェイの攻撃で終わっていたことも印象的だった。