2017年12月3日日曜日

[MMA]
ショーン・オマリーvs.テリオン・ウェア(UFC ジ・アルティメット・ファイター・フィナーレ26
ニコ・モンターニョvs.ロクサン・モダフェリ(同上)
この大会、メイン一試合目のブレット・ジョーンズvs.ジョー・ソトでは、1R開始直後のスクランブルからカーフスライサーでジョーンズがソトを下す…というレアなフィニッシュも見られたが(上の動画はカーフスライサーの技術解説)、セミファイナルとファイナルの二試合からは、凌ぎ合いからのそれぞれの選手の勝負勘が見られる戦いとなった。
ショーン・オマリーはデイナ・ホワイト主催のコンテンダー・シリーズで発掘された選手だが、かつてのセージ・ノースカットの起用といい、勢いがありかつトリッキーなスタイルはデイナの好みの一つなのだろう。長い手足から繰り出される回転系の打撃に加え、ボディムーブを多用し角度を変えて相手に捕まえさせないスタイル、そして23歳の若さと8戦無敗という戦績で注目される選手だ。見た目も何となく細身のミュージシャン風の雰囲気で、典型的な格闘家イメージと若干違う。UFCデビュー戦で今回のセミファイナル戦ということになる。
一方、テリオン・ウェアは31歳。17戦7敗、ある期間連勝しては連敗を繰り返している苦労人に見えるが、UFC2戦目でオマリーとの対戦となった。
試合は、サウスポーのオマリーが様々なフェイントを多用しつつフック、ボディ、それから体を入れかえて相手の真横に回り込んでからのミドルとハイ、時に前蹴りを出す展開。コツコツとウェアに打撃を当ててゆく。ウェアはケージ際に追い込もうとするが、距離が縮まると大きく斜めに踏み込むか体を横に入れ替え、詰めさせない。大きなダメージはないが、有効打の数では1Rは明らかにオマリーのラウンドであった。
ところが2R、オマリーのスピードが若干落ちると、ウェアが攻勢に出る。ハンドスピードや攻撃の連携では最初からほぼ遜色がなかったウェアは、オマリーがオープン側に回る際のロー、ケージ際に詰めたところで連打と膝を入れるなど、絶え間ない攻撃でオマリーを追い詰めてゆく。このラウンドはウェアが取ったと思われた。
3R、やはり一進一退の攻防が続くが、今度はオマリーが少し盛り返し、ケージに詰められなくなる。手数は出るが互いに疲れスピードが落ちた終盤、オマリーが相手の腰を抱えてテイクダウン。そして立った後にすぐ足を引っ掛け、更にもう一度連続でテイクダウンを決める。ここが勝負の分かれ目だったと思う。
結果、レフェリー三者が29-28のユナニマス・ディシジョンにより、オマリーが勝利した。試合後インタビューで、彼は勝ちに徹するためにテイクダウンを途中から狙ったと語っていた。打撃では互角という戦いの中で、自分の特徴にのみこだわらず、意識を切り替えられたことにオマリーの勝負勘が見られた試合であった。
ニコ・モンターニョロクサン・モダフェリは、ネイティブ・アメリカン系ファイターと、いわばレジェンドファイターである二人の対決となった。モンターニョはオールラウンドなMMAファイターという感じのスタイルだが、モダフェリはガチャガチャしたパンチの連打で切り込みつつ、次の攻撃に移ってゆく感じ。どことなくかつてのダン・ヘンダーソンのパンチを想起させる(ただ、強烈な右はないが)。この手の打撃は動きが読みづらく、相手にしてみるとやりにくい所もあるだろう。
いわば世代間によるMMAスタイルの違いを感じさせた両者の試合もまた、一進一退であった。モンターニョは力のありそうな構えから途切れず打撃を出すが、モダフェリも決して引かない。2Rの終わりにはモダフェリがテイクダウンを決めるが、モンターニョは三角の姿勢から肘を入れるなど、タフなせめぎ合いが続く。最後まで一方的な流れは生まれず、互角の応酬が続いた。モンターニョの顔面は赤く染まってゆくが、4Rと5R中盤でそれぞれテイクダウンを決めて印象を強め、最後に判定をもぎ取った。
こちらもやはり、打撃では両者遜色ない試合だったと思う。テイクダウンに切り替えるのはポイントゲームと言われればそうなのだが、しかし最初からゲームプランとして考えられたものというよりも、両者が競り合っている中での一つの攻撃として出されたものだった。激しい攻防の中でその機転が思いつかれたこと自体、そこで勝つために必死に賭けられたものが見られた。モダフェリが初代チャンピオンに賭けてきた気持ちも大きいかと思うと残念だが、両者の気迫のこもった凌ぎ合いは、見る者に感じさせるものがあった。