2017年12月11日月曜日

[MMA]
ブライアン・オルテガvs.カブ・スワンソン(UFCファイトナイト123・フレズノ
昨日はできればKNOCK OUTの年末大会に行きたかったが…諸事情にて行けず、無念。ただファイトパスで見たブライアン・オルテガカブ・スワンソンは素晴らしい試合だった。
オルテガは以前、youtubeのGracie Breakdownチャンネルにヘナー・グレイシーの相手役でよく出ていた、グレイシー・アカデミーの秘蔵っ子である。12勝無敗(1ノーコンテスト)の戦績の26歳、いわばライジングスターだ。一方のスワンソンは知名度の高いベテランとして、最近は有望の若手に対する試金石というか、ランキング上位への登竜門的な役割を果たしている。チェ・ドゥホとの死闘での勝利、アーテム・ロボフの粉砕に続き、今回も「門番」としての役割を果たすかどうかが事前の見所だった。
なおこの大会にはジェイソン・ナイトアルジャメイン・スターリングといった若手スター候補がエントリーしていたが、いずれも敗北。スターリングを破ったマルロン・モラエスは、レフェリーが両者を離した後に生まれた一瞬の隙を逃さず、頭部への蹴りで相手を派手にKO葬(上の動画)。またデイナ・ホワイト・コンテンダー・シリーズで見出されたベニート・ロペスは飛び膝をアッパー代りに出せるイキのいい(荒削りすぎる?)23歳だが、相手のアルバート・モラレスがタフな粘りを見せ、観客を盛り上げた試合だった。若手有望選手にスポットライトを当てようとする意図が見られた大会である。
さて、オルテガ対スワンソンに戻ろう。
メインの5R試合ということもあってか、1R序盤はローの探り合いが続く。だがやがて、パンチの交換を機にスワンソンの打撃が火を吹き始めた。スワンソンは多彩なコンビネーション、特に上に注意を引き付けてからボディーへと繋げる打撃を鋭く打ち込んでゆく。オルテガが「相手の攻撃は読めた」と言わんばかりにパリーや肩のブロッキングを駆使してそれらを防ぎ出すと、スワンソンはさらに、コンビネーションの終わりに強烈なボディを叩き込んでゆく。
スワンソンの打撃は、何というか対戦相手へのメッセージが込められているような攻撃で、相手の出方に対して「これならどうだ」という対話のような攻め方を取るところが面白い。人気の出る一因であろう。
しかし1R終盤、両者クリンチから膝蹴りという攻防で、オルテガが腕をがぶらせダースチョークを仕掛ける。小外掛けでテイクダウンをし、両者仰向けに倒れると、そこからオルテガは体を反時計回りに回してチョークを絞ってゆく。スワンソンは必死の形相で、かなり深く極まっているようだったが、ブザーに救われ両者離れた。
2R、やはり序盤は打撃戦だが、スワンソンはその中で1Rと同様、ときおり見事にボディを決める。オルテガは打撃に付き合いつつ距離を詰め、クリンチから首相撲に移ろうとするもスワンソンは嫌がり、体を入れ替え逃れようとする。だが残り1分50秒頃、オルテガがケージのゲートとなっている部分のポールをうまく使ってスワンソンを追い詰めると、またも膝蹴りの攻防から腕を首に巻きつけ、スタンドのままギロチンを仕掛ける。
(信じがたいことに)オルテガはそのままの姿勢から一度右手を外しアジャストさせると、更にディープにギロチンを絞り込み、耐えかねたスワンソンのタップを呼び込んだ! 一瞬、目を疑うほどの極め力である。
打撃で魅せたスワンソン、そこをクリアしつつ強烈なサブミッションを見せつけたオルテガ。両者の攻防は、「コミュニケーション」というような平板でつまらない言葉では言い表せない「やり取り」であり、力と技術、そしてそれらの背後に備わるもの同士が賭けられ、ぶつけられる「しのぎ合い」であった。その意味でこの一戦はまさしく、MMAを見る醍醐味に満ちた試合であった。