フランク・カマチョvs.ダミアン・ブラウン(UFCファイトナイト121・シドニー)
ファブリシオ・ヴェウドゥムvs.マーチン・ティブラ(同上)
フランク・カマチョはかつてPXCの中継で見たことがあり、粕谷優介に負けたが中村K太郎や松本光史らに勝つなど、当時の日本の選手勢をほとんど寄せ付けない強さを見せていた。だがUFCデビュー戦ではリー・ジンリャンに負け、「やっぱりUFCはあのカマチョも手が出ないほどレベルが高いのか…」と思わされつつ、今回の試合も楽しみにしていたのだった(ウェルターからライト級に落としている)。一方のダミアン・ブラウンはオーストラリア軍にいたこともあり、アフガニスタンに送られた後でPTSDを発症、その療養も兼ねMMAをはじめたという経歴の持ち主とのことである。ベースには禅道会があるようだ。
カマチョは体の圧力と重そうな打撃で相手の体力を奪ってゆくタイプ、ブラウンはあらゆる角度から相手の隙をこじ開けてゆこうとするタイプか(動き自体はチャック・リデルぽい感じ)。2Rはコンタクトが打撃中心となり、両者のパンチが交錯する。しかし結果として、的確で速いストレート系のコンビネーションとスタミナを持つカマチョが競り勝った印象だった。ブラウンは振り回すフックが多く、それもカマチョは見切っていた。
3Rはカマチョのボクシングで何度もブラウンをケージ際に追い詰め、相手の足を奪ったのが良かった。見合って叫び合う場面も見られるなど、「MMA」というより「総合格闘技」的な色も強く、見ている時から「こりゃファイト・オブ・ザ・ナイト行くかもな」という好試合だった。カマチョは即再戦もOKと言っているようだ。
やはりミオチッチ戦の反省があるのかヴェウドゥムは突っ込みすぎず、5Rをフルに使って相手を弱らせていった。ティブラは構えを変えることで狙いを絞らせない作戦だったのかもしれないが、ヴェウドゥムはどういう構えでも動じることなくオーソドックスな打撃を打ち込んでゆく。もちろんヴェウドゥムのサブミッションを含めた総合的な力があった上での話だが、打撃の基礎を高いレベルに磨き上げてゆくことで、相手が攻め方を変えても対応できる好例を示していた。訴訟トラブルもあり若干心配ではあったが、盤石の試合運びだったと言える。