TJ・ディラショーvs.コーディ・ガーブランド(同上)
やはりヘンリー・セフード対デミトリアス・ジョンソンのリマッチに触れない訳にはいかない。初戦はDJの膝がセフードのみぞおちを直撃して、DJの文句なしの勝利だった。今回はMMAの経験を積んだセフードがどれほどDJ相手に自力を発揮できるのかが焦点だったと言える。
1RはDJが蹴り主体で攻め、2Rはセフードの足を取るも、やはり金メダリストは倒せない。セフードは時折、足を取ることをフェイクで入れたりするが、中盤まで打撃勝負。終盤に内掛けからテイクダウンをして上を取るが、そのまま終わり。
5R、DJは積極的に前に出るが、やはりセフードを打ち崩せない。残り2分でセフードがタックルに行き、ケージ際でバックを取る。DJ差し返すもセフードテイクダウン、DJ離れて立ち上がり、パンチの応酬。DJはハイなど出すも決定打には欠ける。
再びセフードがテイクダウンを狙ってきたところをDJが切り、互いにもう一度パンチ連打を出し合ったところで試合が終了した。
セフードはレスリング+空手という少数派のスタイルだが、遠い間合いで相手の打撃を外し、近づく時は打撃かテイクダウン狙いかがハッキリしている。打撃の決定力については、まだ伸びしろがありそうである。
しかし、セフード対堀口恭司が見てみたかった所だな…と一瞬考えてしまったのは、私だけではないだろう。
TJの構えは非常に低い。頻繁にスタンスの左右を変えながら、左ジャブ・右ハイを出し、ローを打ってゆく。するとガーブランドは3連打からの右ハイを返すが、互いにかわす。
ガーブランドのローの後、互いにジャブを打ち合い、TJは左右フックの連打で入ってゆくがガーブランドは体を入れ替え、オクタゴン中央に戻る。
TJは出入りしつつ右フック。ガーブランドが一度離れ再び近づいた所でTJは右を見せ、ダッキングから左ミドルを出すとヒットする。これにガーブランドは右パンチで返す。
TJ、スタンスをサウスポーにセット、ガーブランドの右ミドルを抱えようとする姿勢から右ローを出す。タックルフェイントを見せ、離れた所にバックブローを出すが空振り。ガーブランドは「それがどうした」とばかりに直立ポーズを示す。
ガーブランド、右ミドル。TJは再びタックルフェイントからの左インロー。TJが構えをオーソに戻して右ローを出した際、ガーブランドがその足を取りつつ右ストレートを出すと、TJが前にバランスを崩す。抑えにいったガーブランド、バックに回りTJの側頭部にパンチを当てながら立つ。右左のパンチを連打するが、TJはガードしている。
追ってゆくガーブランド、やはり左右のフック連打を見せるが、TJが左に体を傾けながら右フックを思い切り振ると命中。ガーブランド、応戦してやはり右フックを出すが、TJは同じ右をさらに二連続で強く出し、全てガーブランドに命中させるとガーブランドは尻餅をついた。
TJ、右ハイから左ロー、ジャブに繋げる。再びオーソの構えに戻し、右を出すとガーブランドも左で応戦し、さらに右フックを出す。ガーブランドはケージ際に詰められてゆき、TJがタックルフェイントを見せるとガーブランドはタックル姿勢から右を出すが、そこにTJは右フックを合わせる。ガーブランドふらつきながらケージまで下がり、跳ね返ってきたところにTJが右フックを合わせるとガーブランドダウン! TJはバックを取り、再びパウンドの嵐を注ぐ。
だが、試合後にTJが語ったところによると、ガーブランドの弱点として「右を出す際には左のガードが下がっていること」が指摘されていた。ラウンド中盤で出した相手の右に合わせての右三連打は、彼が確実に戦略を実行したことをうかがわせていた。
「知能は本能化されてはじめて知能になる」(大意)という言葉もあるが、単なる知識ではなく、自分のものとして動きの中に練り込まれてこそ「知能」が発揮されるのであるとすれば、そのハイレベルなあり方の一つが見られたと言ってよいのかもしれない。