カビブ・ヌルマゴメドフvs.アル・アイアキンタ(同上)
ニューヨーク州ブルックリンで行われたナンバーシリーズだが、すでに報じられているように、メインカードに関連する開催前の騒動が多すぎた大会。
ファーガソンは独自のトレーニング法をかなり多く試しており、動画もネットに沢山あるが、その練習方法がまずかったのではないかという意見が結構ある。鉄柱を蹴るとかは全然ありだと私は思うのだが、不安定な姿勢で膝が前に出るスクワットが足に良くないのは確かだろう。
これでヌルマゴ戦は4回流れたということで、私はファーガソンのファイティングスタイルは嫌いではないのだが、厳しい流れである。
マクレガーは逮捕されたが、5万ドルの保釈金を払い保釈。デイナ・ホワイトはマクレガーに怒りながらも、彼がキエサらに謝罪の意を表していることを伝えているが、キエサは告訴する模様だ。
さて、このマクレガーたちによる襲撃事件をどう考えるべきだろうか。もちろん大掛かりなプロレスということもでき、アメリカのスターの中には、警察沙汰や犯罪行為を通してさらに知名度を上げてゆく者もいるのは確かだ。まさに「ノートリアス(悪名)」にふさわしい行為と言える。
マクレガーは基本、MMAの前提そのものを逆手に取り、覆すことで話題をさらって来た人物だ(選手として強い云々は散々言われていることだから繰り返さないし、否定しない。ただ試合相手の選び方は慎重だ)。ファーガソンが試合出場消失前に言っていたが、彼は「ゲーマー」であって「ファイター」ではない、という指摘は当たっている(EAのUFC3のカバーにもなっているし)。ゲームやルールそのものを自分の力の拡大に利用しつつ、決して主導権を渡さない、という点でそうなのだ。
今回のバス襲撃事件はロボフの意趣返しということだが、結局、試合に出ずして自分の話題性を落とさないための絶好の機会だったということだろう。そしてそのためには、他の出場前の選手を身体的に傷つけても構わなかった。この点でMMAを成立させる前提を崩してしまっており、一線を超えている。
厳しく非難されるべきだし、罰を受けるべきだろう。
見る側としてはMMAのファイトが見たいのであり、武器を持っての戦いならば、戦争映画やYoutubeの戦場FPS動画でも見た方がよい。
ただ、例えばモハメド・アリがヒーローとなったのは、徴兵制や黒人差別へのプロテストを行ったからだ。マクレガーは単に手下のお礼参りを行っただけであり、結局は自分のための行動である点で、アリの足元にも及ばない。
試合外の行為は、その行為として評価すべきである。
1・2Rはナマユナスが取ったと思うのだが、ヨアンナが鋭いジャブと蹴りとを織り交ぜながら攻撃するのに対し、ナマユナスは常にステップとボディワークとパンチが一体となっているスタイルであったことだ。
ナマユナスはパンチを避けることとパンチを出すことが連動しており、かつ序盤は相手の隙間をうまく突く打撃を出しつつ、回転数でもヨアンナに勝っていた。打撃全体が連動している感じである。
5Rが勝負と思われたが、ラウンド終盤でここまで両者一回も出さなかったタックルをローズが決め、このラウンドを取った。ジャッジの採点は三者とも49-46でナマユナスとなったが、極めてレベルの高い打撃戦であり、軽量級のスピード・技術の魅力を惜しみなく見せたファイトであった。
4Rも打撃戦、カビブがコツコツ左ジャブを差し、時々アイアキンタがボディから上へ繋げるパンチ。アイアキンタからタックルにも行くが、倒す姿勢までは行かない。
5Rはパンチの交錯も起こるが、中盤のカビブのタックルをアイアキンタは切る。カビブ、飛び膝から金網にアイアキンタを追い詰めるとアイアキンタを倒してバックを取り、コントロール。パウンド、チョークを試みるも、そのまま時間切れとなった。
ジャッジは50-44が一人、50-43が二人という大差によりヌルマゴメドフがベルトを巻いた。
MMA的には、バスを襲撃するよりも、前日オファーを受ける勇気の方が評価されて然るべきである。